前週の涸沢に続き、紅葉を楽しむため同じメンバー(職場の同僚と3人)で那須岳に向かうことになりましたが、結果的に予想外の展開になってしまいました…。
10月初めに1泊2日で予定した那須岳登山について記事にまとめましたが、想定以上の強風に遭遇し山行を断念したことは貴重な体験でもあるので、是非とも参考にしていただきたいと思います。
那須岳について
那須岳は、那須連山を構成する茶臼岳、朝日岳、三本槍岳の総称ですが、その主峰である茶臼岳をもって那須岳と呼ぶこともあります。茶臼岳の標高は1,915mですが、那須岳の9合目までロープウェイで行くことができるため、初心者でも登れる山といえます。
また、茶臼岳の外輪道にあたる牛ヶ首から姥ヶ平あたりは紅葉の名所であり、特にひょうたん池を配した姥ヶ平からの紅葉は有名です。
那須岳登山の計画から撤退までの顛末
今回は那須岳周辺の紅葉を楽しむため、三斗小屋温泉の大黒屋を予約して、茶臼岳、朝日岳の2山を巡る周回コースを計画しました。
事前の天気予報は晴れでしたが、山頂付近は風速20~25mの風が予測されていることから、山行に躊躇しましたが、現地に行った状況でプランを変更する選択肢も残して那須岳に向かうこととしました。
ロープウェイで山頂駅へ
2023年10月6日の金曜日、東北新幹線で那須塩原へ。那須塩原駅に近づくと、平地は晴れているものの、山頂部には雲がかかっていて初日の眺望は期待薄の状況です。
駅前にはすでに那須ロープウェイ行きのバスが発車を待っています。登山客で混雑を予想していましたが、強風を避けてか乗客は少なく、とりわけ登山者の姿はまばらです。
バスが終点に近づくにつれ、だんだんと風が強くなり、おまけに雨も降りだしてしまいました。
終点の山麓駅に着いて外に出ると気温は低く、フリースやジャケットを着ないとかなり寒さを感じます。
ロープウェイは運行していましたが、待ち客は20人程度でしょうか、ちょっと寂しいですね。
途中、ロープウェイのゴンドラは強風で横揺れし、中間の支柱にぶつかるのではないかと思うくらいあおられたので、少し恐怖感を覚えたほどでした。
山頂駅に到着すると、さっそく防寒対策をしっかりして準備を整えます。1組、2組と出発していく中、風がやむ様子もないので、いよいよ登山開始です。
茶臼岳に向かう
外に出ると、雨というか細かいあられが降っており、常時強い風が吹いている中を山頂目指して進みます。
最初の分岐を過ぎて山頂方面に歩き進みますが、常に風速20mはある風が吹き続け、時折強い突風が吹くとよろける状態となります。
それでも、一歩一歩山頂目指して登り続けます。が、歩みを進めるものの、山頂付近まで来るとさらに風が強くなり、前にも進めない状態となります。
転倒や滑落等の危険を考慮して、登頂はあきらめて下ることにしました。
一旦、山頂駅に戻り、食事をしながら休憩し、風のおさまりに期待します。
しかしながら、いくら待てども一向に風が弱まる気配なし。
ただ、今日は三斗小屋温泉に宿泊する予定のため、意を決して茶臼岳の外輪道を進むことに。
まずは紅葉の名所である姥ヶ平を目指して再スタート。
強風の登山道を牛ヶ首へ
牛ヶ首に至る分岐あたりで、牛ヶ首方面から戻ってくる老夫婦とすれ違った際に様子を聞いてみると、牛ヶ首から先は風が強すぎてとても前に進めないので、三斗小屋温泉に向かうのをあきらめて引き返してきたとのこと。
牛ヶ首までの道は、山腹を横切るトラバース道ですが、山裾から吹き上げる風が強く、時折吹く突風に足を取られながら、慎重に進みます。
30分ほどで牛ヶ首に辿りつきましたが、この付近に吹き付ける風の強さはこれまでよりさらに強力なもので、とても立っていられません。ましてや前進することは儘なりません。
岩陰に隠れて暴風を遮ろうとしますが、風速40~50mもあろうかという強風が容赦なく吹き付けます。
他の人々も岩の陰に身をかがめていましたが、1組、2組と徐々にあきらめて引き返していきます。
我々も30分程度強風に耐えて様子をうかがっていましたが、状況は好転することはないため、やむなく撤退することに。
これ以上留まると、強風による低体温症の心配あったため、撤退をすべきと判断しました。
山行からの撤退
あとは安全に戻るのみです。帰りすがら、牛ヶ首に向かうグループとすれ違いますが、この先の状況を説明し、引き返すのが賢明だと伝えました。
風は相変わらず収まらず、一瞬かなり強烈な突風が吹いたため、同行者が2、3歩くらい飛ばされて転んでしまいました。幸い、擦り傷程度で済みましたが、一歩間違えれば転落の可能性もあったかと。
山頂駅に戻ると、他にも三斗小屋温泉の宿泊をあきらめて引き返してきたグループがいました。
我々も早速宿のキャンセルをすることに。キャンセル料を取られるも、身の安全には代えられない。
ロープウェイは強風のため一時休止しているとのアナウンス。
風が弱まるのを待って下り便を動かすので、しばらくお待ちくださいとの説明がなされます。
午後2時過ぎに下り便が出ることになり、何とか無事に山麓駅に降りてくることができました。
この後、ロープウェイは全面運休になったようなので、乗ることができて幸いでした。
那須の温泉ホテルで宿泊
那須岳登山が中止となったわけですが、せっかく那須まで来たので、温泉宿にでも泊まっていこうということに。
那須塩原駅行きのバスに乗り、途中の那須湯本温泉で下車して旅館や民宿をあたってみますが、当日の食事は提供できないとのこと。ならばホテルを探していると、「ホテル・フロラシオン那須」で1泊2食付きの部屋が取れました。
再びバスに乗り、ホテルの送迎車との待ち合わせ場所に指定された友愛の森で下車。道の駅前から迎えの車でホテルに向かいます。
「ホテル・フロラシオン那須」は、敷島ファームが経営するホテルで、広大な牧場の敷地に建つ瀟洒なホテルでした。
源泉かけ流しの風呂で汗を流したのち、ビュッフェスタイルの夕食をいただきます。
朝食もビュッフェスタイルで、いずれもおいしく満足のいく食事でした。
朝食後に、那須塩原駅まで送ってくれる車を待つ間、ホテル近くの「多羅沢せせらき林道」を散策したり、どうぶつふれあい広場で牛ややぎを見ながら時間を過ごします。
朝日岳で4人が遭難との悲報
那須塩原駅に向かう車中でスマホを見ていると、ショッキングなニュースが目に飛び込んできました。昨日、朝日岳付近で4人の男女が遭難し、今朝全員の遺体が発見されたとのこと。朝日岳は茶臼岳のすぐとなりに位置しており、我々も本来であれば今日行く予定としていました。どうやら、昨日昼過ぎ、登山道で動けなくなった人がいると警察に通報があったものの、その後出動した救急隊は強風のため現地にたどり着けず、一旦捜索を中止、今朝になって再開したところ4人の遺体が見つかったようです。
峰の茶屋跡から朝日岳に至る道は普段から風が強めなところ、昨日の状況では気温も低く、かなりの強風であったことは想像するに難くありません。
強風により身動きがとれなくなり、長時間留まっていることにより体温が低下し、低体温症となってしまったものと想像されます。
4人の方々のご冥福をお祈りしますが、我々も少し離れた場所とはいえ、同じような状況であったので、無理をせず引き返したことは賢明な判断だったと思い返します。
そもそも強風の予報であったにもかかわらず山行を意図したこと自体に判断の誤りがあったともいえますが、実際に想像を超える強風を身をもって体験したことから、今後の山行計画時には十分な検討が必要だと実感しました。
予定していた山行ルートと所要時間
【1日目】山頂駅…茶臼岳山頂…分岐…牛が首…姥ケ平…沼原分岐…三斗小屋温泉(約3時間)
【2日目】三斗小屋温泉…隠居倉…朝日岳…峰ノ茶屋跡…山頂駅(約3時間30分)
※上記時間には休憩時間は含まれていません。