これまで涸沢には2度ほど訪れたことはありますが、紅葉期の涸沢を一度はこの目で見ておきたいと思い、会社の同僚と3名で行くことにしました。
その1泊2日での涸沢山行の様子をご紹介しますが、皆様の参考になれば幸いです。
【my山行日:2023年9月29日~30日(1泊2日・車中前泊)】
涸沢について
涸沢は北アルプスにおける奥穂高岳や北穂高岳など穂高岳登山のメインルートの中継地点に位置しています。涸沢が有名なのは、何といっても山岳紅葉の代表格であり、しばしばテレビなどで紹介されていることから、登山に興味のない人も耳にしたことはあるかもしれません。
涸沢へは、観光地として有名な上高地、その中心地である河童橋を経て梓川沿いに明神、徳澤、横尾に至り、さらに登山道を3時間余り登ることで辿り着くことができます。
夏場の登山期はもちろん、特に秋の紅葉期には多くの人が訪れており、その圧倒的な景色に感動を覚えることは間違いないでしょう。
上高地への交通手段
涸沢への玄関口である上高地には、マイカーで行く場合は、長野県側は「沢渡(さわんど)」、岐阜県側は「あかんだな」の各駐車場に停めてから、専用のバスないしはタクシーで向かうことになります。電車で行く場合には、松本駅からアルピコ交通の上高地線で終点の新島々へ、そこから路線バスで上高地へ行くことになりますが、いずれにしても、釜トンネル入口から上高地まではマイカー規制されているため、バスかタクシーを使うことになります。
首都圏などからは上高地行きの直通高速バスも運行されているので、利用すると便利でしょう。
涸沢での宿泊先
涸沢へ行くのには日帰りは無理なので、宿泊が必要となります。テント泊が可能な方は別として、小屋泊の場合は、涸沢にある「涸沢ヒュッテ」と「涸沢小屋」の2軒の山小屋のいずれかに泊まる必要があります。
ただ、人気の紅葉期ともなると、ツアー会社が団体客用にほとんど押さえているせいか、個人で予約を取るのはかなり至難の業です。
今回の山行にあたっては、予約開始直後から専用電話に電話するもつながらず、200回以上リダイヤルして何とか取れたのですが、取れたこと自体奇跡に近いと感じざるを得ませんでした。
確実に宿泊するには、値段は張りますが、ツアーで申し込むしかないようです。
紅葉を楽しむ涸沢登山コースの紹介
今回ご紹介する涸沢山行は、上高地から明神、徳澤、横尾を経て涸沢に至り、涸沢ヒュッテに1泊して、翌日同じコースをたどって上高地まで戻る一般的なコースとなっています。
夜明けの上高地からスタート
当初はマイカーで上高地に行く予定にしていましたが、駐車場に空きがあるか心配だったこともあり、前日から夜行バスで上高地に向かうことにしました。
しかしながら、上高地行の直通夜行バスは満席だったことから、バスタ新宿から高山行の夜行バスで平湯温泉まで行き、予約したタクシーで上高地へ向かうという奇策に出ました。タクシー代は高くつきますが、3人で割れば、上高地行の直通バス代より安く済んだのは幸いです。
平湯温泉には夜中の3時半に到着、約1時間半待って予約したタクシーで開門時間の5時過ぎに上高地に着くと、すでに直通夜行バスで到着した多くの人でにぎわっています。
早速身支度を整えて涸沢に向けて出発。まだ薄暗い道を5分ほど進むと河童橋に着きますが、早朝だけあって人影はまばら。このように人がいない河童橋を見られるのは、こんな時間でしかないですね。
その後歩き進むにつれ、あたりも段々と明るくなり、明神岳の山頂も明るく映ります。
今日は朝から天気が良く、最高の山登り日和です。
明神で一服してから、さらに先に進みます。
道脇の熊ベルを鳴らしたりして、徳澤、そして横尾に到着。
ここ横尾は、涸沢・穂高岳方面と槍ヶ岳方面への分岐点であり、横尾山荘が建っているので、軽食などもとることができます。
登山道の始まり
これまでの平坦な道とは異なり、横尾からは登山道に入ります。といっても、途中の本谷橋までは比較的緩やかな山道なので、良い準備運動となるでしょう。
左手にはクライマーの聖地ともいえる屏風岩がどっしりと構えています。
急峻な岩場を見ると、よくぞあの岩壁を登っていくなぁと思えてしまいます。
1時間半近く歩くと本谷橋に至り、吊り橋を渡った右岸は絶好の休憩場所となっています。
登山客は皆それぞれに食事をとったりして休んでいます。
急坂を一気に登る
本谷橋から先は本格的な登山道となります。傾斜もきつくなり、足元がゴロゴロした石の積み重ねのため、足をくじかないよう用心して登り進めていきましょう。延々と登り坂が続くため、途中休みを取りながら歩くのが良いと思います。
途中で右手に視界が開ける場所があり、遠くに南岳の山頂が見えるあたりで休憩を取るのがいいかもしれません。
勾配が少し緩むと、「青ガレ」という一面に石が積み重なった場所がありますが、落石の危険もあるので、上方に注意しながら、止まることなく一気に通過することが肝要です。
このあたりからカールの一部が見えるため、テンションも上がってくるのではないでしょうか。
その先の「Sガレ」を通過し、木々で覆われたトンネル状の山道を抜けると視界が開け、さらに右手に沢が流れている場所にでてくれば、あともう一息です。
ただ、この辺まで来ると足が疲れてくることもあり、足取りも重くなりますが、一歩一歩着実に進みましょう。
そして、「涸沢」の標識までたどり着けば、涸沢ヒュッテまでは本当にあと一息です。
石段を登りきると、いよいよ涸沢ヒュッテに到着です。
涸沢カールの大展望
涸沢ヒュッテにたどり着くと、早速テラス席に急ぎます。
すると、眼前には紅葉で色づいた木々を擁した涸沢カールの大展望が待っていました。
それにしても、今日は何という晴天でしょう。本当に雲一つない青空の下、涸沢の絶景には息をのむほどの感動を覚えます。
登山者は皆、ここまで頑張って登ってきた甲斐があると思っていることでしょう。
周りにはカールを囲むように奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳、前穂高岳と3,000級の4座。
そして色づいた木々のコントラスト。ずっと見ていても飽きない景色です。
しばらく、そして何度も見入ってしまう絶景ですね。
登山をしていて思うのは、実際の景色は写真ではなかなか伝わらず、その迫力や空気感は現地で体験しないとわからないということです。
しばらくしてから、テラス席で名物のおでんをビールとともにいただくことに。誠に至福の時間ですね。
涸沢ヒュッテで宿泊
涸沢ヒュッテにチェックインして、しばらく部屋で休憩。紅葉の繁忙期だけに、窮屈な部屋を案内されると思いきや、6畳ほどの半個室に3名のため結構余裕があります。
団体客とも別棟のようで、静かな部屋で快適に過ごすことができました。
夕暮れ時になり外に出てみると、テント場には色とりどりのテントが張られていました。
夕食の時間は6時から。本館にある食堂へ行くと、洋風な洒落た佇まいとなっています。壁には一面に穂高の写真が飾られていて、山小屋感を演出しています。
夕食後にテラス席へ出てみると、暗闇に涸沢小屋と色とりどりのテントの明かりが浮かび上がり、幻想的な様相を呈しています。
赤く焼けたモルゲンロート
翌朝は早朝4時半に明かりが点灯し、5時10分から朝食タイムです。
朝食後、テラス席に向かうと、多くの人が “その時” を待つべく、カメラを向けて待っています。
そして “その時” がやってきました。朝日がカールを照らし始めると、山頂部分から山肌が赤く焼けてきました。モルゲンロートです。
皆一様に歓声をあげてその姿に見入り、写真を撮りまくっています。
今朝も晴れているので美しい朝焼けを見ることができました。
だんだんと朝焼けの範囲が広まり、カール全体が明るく照らし出されます。
涸沢ヒュッテから出て、涸沢小屋とは反対方向にあるパノラマコースを少し行くと、涸沢ヒュッテを含む涸沢の全景を見ることができるので、ぜひ立ち寄ってみてください。
涸沢を後にする
いよいよ下山の時間となりました。
一旦、涸沢小屋方面に向かい、テント場を通って下ることに。テント場の下部には真っ赤に色づいたナナカマドがあり、新聞社の記者らしき人がカメラを向けていました。
ナナカマドの赤色が山肌を覆うようになると紅葉のピークとなることでしょう。
おそらく、この日から3~5日後が紅葉のピークになるのではないでしょうか。
後ろ髪を引かれながら、終着の上高地に向けて下山路を下りていきます。下山路は石段を踏み外さないように気を遣うものの、登りと比べればすいすいと進み、一気に本谷橋まで下りてきました。
一服した後、さらに下り横尾までくれば山道は終わりです。
途中の徳澤園では、カレーとソフトクリームを堪能した後、明神からは右岸路にある岳沢湿原を経由して河童橋へ戻りました。
上高地バスターミナルでお土産を買い、帰りは予約の取れた高速バスで東京に戻り、この1泊2日の涸沢山行を終えました。
一度は訪れてみたいと思っていた涸沢に、運よく山小屋の予約が取れたうえ、絶好の晴天に恵まれ、錦秋の涸沢カールを満喫できた山旅となりました。
涸沢山行のルートと所要時間
【1日目】上高地バスターミナル…河童橋…明神…徳澤…横尾…本谷橋…涸沢(約6時間)
【2日目】涸沢…本谷橋…横尾…徳澤…明神…岳沢湿原…河童橋…上高地バスターミナル(約5時間30分)
※上記時間には休憩時間は含まれていません