前編で鍋割山山頂での絶景と鍋焼きうどんを堪能するまでをお伝えしましたが、後編では縦走を進めて塔ノ岳に至り、大倉尾根を下山する様子をご案内します。大倉尾根の途中からショートカットルートにて下山したところ、思わぬ道迷いが…。
登山コースの紹介(後編)
鍋割山稜を伝い塔ノ岳を目指す
鍋割山山頂でのひと時を満喫したのちは、塔ノ岳を目指して再出発。
スタートしてしばらくは、鍋割山稜の平坦な登山路を進みます。今回は紅葉の時期を終えていますが、紅葉時期の鍋割山稜を歩けば美しい景色が楽しめると思いますし、新緑の季節も若葉が輝いて清々しい気持ちで歩くことができるでしょう。
両側が開けた場所では、左手には丹沢山塊の山々、右手には遠くに相模湾が一望できます。
しばらく歩いて少し上がったところから後ろを振り返ると、鍋割山の背後に富士山がどっしりと構えていて、なかなかにして良い景色が楽しめます。
さて、ここからは、いくつかのピークをアップダウンしながら次第に高度を上げていきます。鍋割山までの登りで結構疲れてますので、足取りが重くなっていますが…。
小ピークの小丸を越えると、二俣分岐に差し掛かりますが、ここから下山すれば二俣へ下ることができます。ただし、道はあまり整備されていないので、初心者は避けたほうが無難です。
さらに登ると大丸に至ります。ここまで来ると、右手に長い大倉尾根を見て取ることができます。途中にある花立山荘も視界に捉えられます。
大倉尾根にだいぶ近づいてきたものの、下り坂でいったんかなり高度を下げます。下らなくていいのになぁ、と思いますが、登山あるあるですね。
ただ登り返すと、意外とすぐに大倉尾根との合流点である金冷シに着きました。
さぁ、ここからが塔ノ岳に向けた最後の登りです。連続する木の階段をひたすら登り詰めると、視界が一気に開けて塔ノ岳の山頂に到着します。
塔ノ岳山頂に到着
今日は朝から天気が良いので、山頂では気持ちのよいパノラマが待っていました。富士山は、鍋割山山頂の時より少し雲がかかりましたが、それでも青空に映える優麗な姿は美しいですね。
休日ともなると多くの登山客でにぎわう山頂ですが、今日は平日のため人もまばら。そのほとんどがソロ登山客のため、不思議なほど静かな雰囲気です。
風が冷たくて、じっとしていると寒いので、フリースとアウターを着込んだうえで、ベンチに座り、持参した菓子パンとホットコーヒーで体を温めます。
風もだんだん強くなってきたので、見納めに周りの景色をぐるりと見渡したら、下山を開始。
大倉尾根を下る
山頂からは長く続く木の階段を下りていきます。この木の階段は、以前来た時より新しくなっているようなので、近年付け替えられたのかもしれません。
先ほど通った金冷シを過ぎ、木の階段に続き、ガレた急坂を降りると花立山荘に着きます。有料トイレもあるので、用がある方は済ませておいたほうが良いでしょう。
山荘前の登山道沿いのベンチで休んでいると、「キューン」というような動物の鳴き声が聞こえてきます。声のするほうに目をやると、登山道のすぐ脇に鹿がこちらを見て佇んでいます。見ている分には愛くるしいのですが、近年頭数が増えて、食害を及ぼす原因となっていることを考えると複雑な気持ちですね。
再び「キューン」と、何か訴えているような感じが・・・(エサでも欲しいのかなぁ)。どうやらもう一頭いるようで、しばらくすると、そろって森の中に消えていきました。
花立山荘を出発して、階段とザレた坂道を繰り返しながら下っていくと、やがて堀山の家に到着。
二俣への下山路で道迷い!?
いつもは堀山の家から大倉まで下っていくのですが、今回は表丹沢県民の森駐車場に車を停めているので、二俣へ下るショートカットのコースを選択しました。事前に山地図で確認したところ、破線ルートではあるものの、特段危険個所はなさそうなので、問題ないと考えていました。とろこが、堀山の家の前に「ここから二俣へ抜ける道は、道迷い等の遭難事故が多発しているため危険です。」と書かれた看板を見たので、一瞬躊躇しましたが、慎重に進めば大丈夫だろうと、当初の予定通りのコース選択としました。
このコースは「小草平コース」と呼ばれていて、最初は尾根沿いに下っていくのですが、登山路らしき道は見当たらず、おまけに晩秋の時期のため、落ち葉が山肌を覆い隠して、踏み跡もわかりません。とにかく、行く手にある木の幹に括りつけられた赤いテープのみが頼りです。赤いテープを見つけては、道迷いをしないよう立ち止まって、行く先を慎重に確認しながら歩き進みます。まっすぐな尾根道を何とか下りきると、今度はジクザクに斜面を下りていきますが、この時も木の幹のほか、根っこにも取り付けられた赤いテープをたどります。
ようやく斜度も緩やかになり、登山道も確認できるようになると、沢の水音も近くなり、だいぶ高度を下げたことがわかります。
下山に必死だったことで、写真撮影もできなかったので、ここからは “迫真の解説” でお送りします。
沢に下りる手前の道は、落ち葉が大量に積もり、登山道ははっきりしませんが、ここも滑り落ちないよう慎重に進んで、木の枝に赤いテープのある沢沿いまでたどり着きました。
ここまで来たら二俣は近いのかと思っていると、おや?行く先を示す赤い目印が見当たりません。沢沿いを進むのかと思い、しばらく沢に沿って歩いていると、右手の滝から流れこんだ沢と合流した場所に行き当たり、これ以上は先に進めません。これはもしかして道迷いか?やっちまったか!? と思いながら、とりあえず、先ほどの沢沿いの赤いテープの地点まで戻ります。
でもどの方向に進んでよいのかわからず、夕刻の時間も迫っていたので焦りも生じてきました。道に迷ったら引き返すのが原則なので、最悪、今下りてきた道を引き返して掘山の家まで戻ることも頭をよぎりましたが、この赤いテープまでは間違いないと思い直し、心を落ち着かせて、もう一度目を凝らしてあたりを見渡したところ、沢の対岸後方の離れた場所に赤いテープを見つけることができました。沢を渡り近づくと、「←塔ノ岳 二俣→」と書かれた古い看板もありました。これで助かったと思い、胸をなでおろした瞬間です。しかしここは本当に分かりにくいので、迷う人が出るのもうなずけますね。
沢から少し登り返して、森の中を沢沿いに進めむと、やっと二俣にたどり着くことができました。秋山は日が落ちるのも早く、暗くなり始めたら動きも取れなくなるので、細心の注意が必要です(日帰りの山旅でもヘッドライトは必需品です!!)。
今回の反省点は、事前に地図をしっかり確認することでした。地図を見ると、ルートが沢をクロスしていることが確認できるので、迷った場所が「渡渉点」であったことがわかり、もっと早く対岸の道を探すことができたと思われるからです。いずれにしても、山歩きにまだ不慣れな場合は、地図上の「破線ルート」はなるべく通らず、人通りのあるメインルートを選択することをお勧めします。
日も陰り始める中、二俣からは平たんな林道を駐車場まで戻ります。わずかに残る紅葉の木々を見ながら、足早に歩き進め、ゴール地点まで戻って今回の日帰り山旅を終えました。
それにしても、今回は山頂からの素晴らしい景色を楽しんだ反面、道迷いしそうになったことは貴重な経験となりました。
登山ルートと所要時間
所要時間:表丹沢県民の森駐車場から二俣までは片道30分程度です。
・二俣・・・後沢乗越・・・鍋割山(約2時間20分)
・鍋割山・・・金冷シ・・・塔ノ岳(約1時間40分)
・塔ノ岳・・・堀山の家・・・二俣(約2時間)
※上記時間には休憩時間は含まれていません。